
営業コンサルの提案が社内で実行されないのは、提案の質の問題であることは多くありません。施策ごとに誰が担当し、いつまでに終え、誰が決め、実行したかを何で確かめるか。この4つが社内で決まっていないと、正しい提案でも次の定例まで動かない。この記事では、提案が実行されない理由を4つに分け、実行まで伴走する支援会社を選ぶときに確かめることを書きます。営業コンサルの費用相場や、営業代行との料金の比べ方は扱いません。
定例のあとに起きていること
例として、営業コンサルが月1回の定例に入っている、営業5名の会社を取り上げる。
ある月の定例で、コンサルが2つの施策を提案しました。ひとつは、アプローチ先を従業員100〜300名の会社に絞り、リストを作り直すこと。もうひとつは、失注した商談の理由をCRMに残すこと。代表も営業責任者も納得し、議事録には「来月までに実施」と書かれました。
翌月の定例で進み具合を聞くと、リストは作り直されていません。誰の担当とも決まっておらず、営業担当者は全員、自分の商談を優先していたからです。CRMには失注理由の項目が足されていたものの、選択肢が決まっていないため、自由記述の欄に「タイミング」「検討中止」「予算」がばらばらに入っている。集計できない。
コンサルは、先月と同じ2つの施策をもう一度提案します。提案の内容は正しいまま、定例のたびに同じ施策が繰り越されていく。決めた施策が実行されない会社で、よく起きている流れです。
施策を止めているのは、提案を受け取ったあとの社内の段取り
上の場面で施策が止まった原因を、定例のあとに起きることと、先に決めることに分けた表。
| 理由 | 定例のあとに起きること | 先に決めること |
|---|---|---|
| 担当と期限が決まっていない | 全員が「誰かがやる」と思い、誰も手を付けない | 施策ごとに担当者を1人と、終える日を決める |
| 決める権限が現場にない | リストの条件や予算の承認を代表に上げたまま、返事を待って止まる | 担当者がどこまで自分で決めてよいかを先に決める |
| 手を動かす時間が誰にもない | 営業担当者は商談を優先し、施策の作業は後回しになる | 誰の時間を週に何時間使うかを決める。足りなければ外に出す |
| 実行したかを確かめる記録がない | 次の定例で「やりましたか」と口頭で聞くしかない | CRMの項目や週次の数字で、実行の有無を確かめる方法を決める |
4つのうち、提案するコンサル側が決められるものはほとんどありません。担当者の任命も、権限の線引きも、営業担当者の時間配分も、社内でしか決められない。提言だけを買う契約では、この4つは発注した会社の仕事として残ります。
権限と役割が決まっているプロジェクトは、完遂率が約3倍
ローランド・ベルガーが2026年6月30日に発表した調査(2026年5月実施・上場企業のCxO・経営企画責任者200名・インターネット調査)では、意思決定の権限と役割が明確に定義されているプロジェクトは全体の約4割でした。定義されているプロジェクトの完遂率は約6割で、定義されていない場合は約8割が完遂に至らない。同社はこの差を「約3倍」としています。
出典:ローランド・ベルガー「戦略実行を止めるのは『決められない組織』」(2026年6月30日・本文は転載せず要約しています)
同じ調査の別の発表(2026年7月8日)では、目的と優先順位の認識が統一されたプロジェクトは、統一されていないプロジェクトより完遂率が16ポイント高いとされています。
出典:ローランド・ベルガー「戦略は『策定してから実行』できない」(2026年7月8日・本文は転載せず要約しています)
この調査は上場企業の経営層に全社のプロジェクトについて聞いたもので、営業の施策に限った数字ではありません。それでも、「誰が決めるか」と「何のためにやるか」が揃ったプロジェクトほど最後までやり切られるという結果は、営業5名の会社の定例にもそのまま当てはまります。
営業支援の3つの型:提言型・伴走型・営業代行型
提案を社内で実行するところまで手伝う会社は、伴走(実行支援)型と呼ばれる支援に当たる。営業の支援には提言型・伴走型・営業代行型の3つの型があり、実行まで関わるのはこのうち伴走型です。3つは、誰が手を動かすかと、契約が終わったときに何が自社に渡るかで分かれます。
| 型 | 誰が手を動かすか | 契約が終わったとき自社に渡るもの | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 提言型(営業コンサル) | 自社の社員。支援会社は分析と提案を担う | 提案書と議事録 | 施策を実行する人と時間が社内にあり、方針だけを固めたい |
| 伴走型(実行支援) | 自社の社員と支援会社の両方。施策ごとに分担を決める | 手順書、CRMの設定、週次で見る数字の一覧 | 方針を決めたあと、社内で実行する人や段取りが足りない |
| 営業代行型 | 支援会社の担当者 | 契約で決めた報告書と記録 | 売り方が決まっていて、商談の量だけが足りない |
冒頭の営業5名の会社は、施策を実行する時間が社内に無いのに、提言型の契約を結んでいた例です。提案が正しくても、手を動かす人がいない以上、施策は進みません。
注意したいのは、「伴走」という言葉をどの型の会社も使うことです。月1回の定例に出て助言するだけの契約も、施策の作業を一緒に進める契約も、同じ「伴走支援」と書かれていることがある。見分けるには、次の4つの質問への答えを聞くのが確実です。
実行まで伴走する会社を選ぶ4つの質問
契約前の打ち合わせで、支援会社に次の4つを聞きます。
| 質問 | 伴走型の答え | 注意したい答え |
|---|---|---|
| 施策の作業は、誰が手を動かしますか | 施策ごとに、支援会社がやる作業と自社の社員がやる作業を分けて示す | 「御社の状況に合わせて柔軟に」で、分担が出てこない |
| 施策の担当者と期限を決めるところまで関わりますか | 定例の場で、施策ごとの担当者・期限・決める人を一緒に決める | 「担当の割り振りは御社でお願いします」 |
| 実行したかを、何で確かめますか | CRMの項目や週次の数字を決め、定例の前に確かめる | 定例で口頭で進み具合を聞く |
| 契約が終わったら、何が自社に渡りますか | 手順書、CRMの設定、週次で見る数字の一覧が、自社のドライブやCRMに置かれる | 提案書と議事録 |
4つ目の質問を聞くのは、契約の初日。手順書やCRMの設定が支援会社の手元にあるまま契約が終わると、翌月から施策を続ける人が手順を一から探し直すことになるからです。
ツールの使われ方でも、同じ傾向が数字に出ています。HubSpot Japanが2026年2月27日に公表した調査(2025年10月30〜31日実施・従業員51〜5,000名の企業の営業担当者など売り手1,545名)は、AIを週1回以上使う人の割合を会社の支援の度合い別に集計しています。支援なしは35.6%、利用の許可だけなら47.2%、研修ありで56.9%。業務プロセスへ組み込んだ会社では**74.8%**まで上がります。道具がいちばん使われたのは、毎週の業務の手順に入れた会社でした。施策も、毎週の手順に入れた会社で実行されます。
出典:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査2026」(2026年2月27日・本文は転載せず要約しています)
全部を手順にしなくていい
すべての施策を手順に落とせるわけではありません。商談の場で相手の反応を見て話を変える判断や、ベテランの営業担当者が電話口で感じ取っていることは、手順書に書いても再現しにくい。支援会社が「営業のすべてを仕組み化します」と言うなら、どこまでを手順にし、どこからを営業担当者の判断に任せるのかを聞きます。
手順にするのは、繰り返し起きる作業から。アプローチ先のリストの条件、失注理由の選択肢、週次で見る数字。この3つが決まって毎週回っていれば、定例で話す内容は「やったかどうか」から「数字が動いたかどうか」に変わります。
決めた施策が実行されない状態は、売上のうち「打った手が売上に変わらない」ところを詰まらせます。コンサルの提案に費用をかけても、施策が実行されなければ、商談の数も受注率も提案を受ける前と変わらないからです。コンサル会社を替えても、新しいツールを入れても、施策ごとの担当・期限・決める権限・確かめ方が社内で決まっていなければ、この詰まりは戻りません。
GTMエンジニアリングとは、営業戦略を起点に、売上を生み出し続けるGTM(Go-to-Market)の仕組みを設計・実装・定着させることです。営業コンサルの提案に当てはめると、施策を提案して終わらせず、施策ごとの担当と期限を決め、実行したかをCRMの項目と週次の数字で確かめる運用を現場に組み込み、支援が終わったあとも社内の担当者が同じ手順で施策を回せる状態までつくることを指します。営業コンサル・営業代行・GTMエンジニアリングを、費用とあわせてどの状況で選び分けるかは、営業代行とコンサルの比較で整理しています。
次の定例の前に、前回決めた施策を1つずつ見直し、担当者の名前と終える日が書かれているかを確かめてください。書かれていない施策が、次の定例でまた繰り越される施策です。
本記事の見解はWeaveXによるものであり、引用元各社の見解を代表するものではありません。
よくある質問
- 営業コンサルティングの効果が出ないのはなぜですか?
- 提案の内容が正しくても、施策ごとに誰がいつまでに何をするか、誰が決めるか、実行したかを何で確かめるかが社内で決まっていないと、施策は次の定例まで動きません。効果が出ない原因の多くは、提案書の中ではなく、提案を受け取ったあとの社内の段取りにあります。
- 伴走型の営業コンサルとは何ですか?
- 提案を渡して終わるのではなく、施策を実行する段取りづくりや、実行したかの確認まで支援会社が関わる形の支援です。支援会社が手を動かす範囲と、自社の社員が手を動かす範囲を契約前に分けて決めるのが特徴です。
- 営業コンサルと営業代行はどちらを選べばいいですか?
- 売り方が決まっていて商談の量だけが足りないなら営業代行、売り方の方針を固めたいなら営業コンサルが向いています。方針を決めたあと社内で実行する人や時間が足りない場合は、実行まで関わる伴走型の支援を選びます。



