
採用の現場では、企業も求職者も当たり前のようにAIを使い始めています。ところが直近に公開された二つの調査を並べると、その使われ方はまだ噛み合っていないように見えます。企業は選考にAIを入れたのに手応えを得られず、求職者はAIが語る企業像を見て応募を取りやめている——採用という入口の両側でAIが判断に関わり始めた変化を、人と組織の視点で読み解きます。
Pickup:今日の注目
① 採用にAIを入れた企業の半数が「機能していない」と回答(TalentX)
採用支援を手がけるTalentXが、従業員500名以上の企業の人事担当者を対象にした「AIネイティブ採用調査2026」を2026年6月18日に発表したと報じられています。調査では、採用にAIを導入した企業のうち約53.3%が「機能していない」と答え、AIと人の役割分担が明確でない企業が67.9%にのぼったとされています。AIを入れること自体は進んでも、成果や候補者との関係づくりにまでは届いていない実態がうかがえます。
転職を考えているなら:応募先がAIを使っていても、選考体験の質は企業ごとに大きく差が出そうです。連絡の速さや面接での対話の丁寧さは、その会社が「AIをどう使いこなしているか」を映す手がかりになります。効率化された事務連絡と、人が向き合ってくれる場面のバランスを、企業を見極める材料の一つにしてみるとよいかもしれません。
採用する企業なら:AIを導入して終わりにせず、「どの作業をAIに任せ、どこで人が候補者と向き合うか」を決めることが成果を分けそうです。特に少人数で採用を回す中小・ベンチャーほど、効率化の恩恵は大きい一方、役割分担が曖昧なままだと候補者体験が薄くなり、辞退につながる可能性があります。ツール選びの前に、自社の選考のどこに人の手触りを残すかを言語化しておくことが役立ちそうです。
知っておきたいのは、AIの導入率よりも「候補者から見た体験がどう変わったか」が、これからの採用力を左右しうる、という点です。
出典:TalentX(2026年6月18日・本文は転載せず要約しています)
② 転職者の9割近くが、AIの企業情報がきっかけで応募を取りやめた経験(PR TIMES)
デジタルマーケティング支援のLANYが、直近1年以内の転職活動で生成AIを使って企業情報を調べた25〜45歳の111名を対象にした調査結果を、2026年6月4日に発表したと報じられています。調査では、AIで調べた企業情報がきっかけで応募や選考の辞退をした経験が「ある」と答えた人が87.4%にのぼる一方、AIの企業情報を「事実ではない・正確ではない」と感じた経験がある人も91.5%に達したとされています。辞退を決める前に公式サイトやIR情報で自分で確認したという人は44.3%でした。
転職を考えているなら:AIは企業研究の入口として便利ですが、その回答は誤りを含むことがあります。気になる企業ほど、AIの評価をそのまま受け取らず、公式情報や社員の声など一次情報で確かめる一手間が、後悔しない選択につながりそうです。AIが示す「他社比較」や口コミの引用は、あくまで一つの見方として距離を置いて眺めるくらいがちょうどよいかもしれません。
採用する企業なら:候補者は面接に来る前に、AIが語る自社像を見て判断している可能性があります。自社の情報が古かったり、公式の発信が薄かったりすると、AIが不正確な像を補ってしまう恐れがあります。採用ページや実績の発信を最新に保ち、AIが参照しやすい正確な一次情報を自ら整えておくことが、いわば「見えない一次選考」への備えになりそうです。
押さえておきたいのは、企業が知らないところでAIが自社を代弁し、候補者の意思決定を左右し始めている、という点です。
出典:PR TIMES(2026年6月4日・本文は転載せず要約しています)
二つの調査に共通するのは、AIが採用の「入口の体験」を静かに左右し始めている、ということです。企業側はAIを導入しても、候補者から見た体験を設計しなければ成果につながらず、求職者側はAIが語る企業像を判断材料にしながらも、その正確さに不安を抱えています。だからこそ、企業に求められるのは「AIをいくつ入れたか」ではなく「候補者から見て体験がどう変わったか」を問い直すことであり、求職者に求められるのはAIの答えを入口にしつつ一次情報で確かめる姿勢です。採用の両側でAIが判断に関わるいま、人と人が向き合う場面をどこに残すかが、これまで以上に問われていきそうです。
本記事の見解はWeaveXによるものであり、引用元各社の見解を代表するものではありません。



