
「あの人みたいになりたい」と思える相手が、職場に見当たらない。7月に発表された調査を見ると、そう感じているのは特別なことではなく、20代でむしろ多数派のようです。同じ月には、20代の昇進意欲が全年代で最も高いという結果と、転職の書類作成にAIを使う人が半数近いという結果も出ています。バラバラのニュースに見えますが、並べてみると「キャリアを考えるときの参照先が、外から手元へ移っている」という一本の線が浮かびます。
Pickup:今日の注目
① 20代の8割がロールモデルを求め、同じく8割が「見つけにくい」と回答(PR TIMES/Job総研調べ)
パーソルキャリアの調査機関Job総研が社会人469人に聞いた調査で、ロールモデルを必要と考える人は20代で81.4%と全年代で最も高く、同時に「見つけにくい」と答えた人も80.6%にのぼったと発表されました。いない理由の最多は「自分と似た境遇の人がいない」で50.0%、キャリアの相談相手がいない人も全体で59.7%と報告されています。
転職を考えているなら:「似た境遇の人がいない」のは、探し方が足りないからというより、キャリアの分岐が以前より細かくなったことの結果と考えられます。丸ごと真似できる一人を探すのをやめて、参考にする対象を分解してみてください。仕事の選び方はAさん、専門性の広げ方はBさん、働く時間の決め方はCさん、という具合に3人から1つずつ借りるほうが現実的です。転職先を検討するときも、「憧れる人がいるか」より「自分の3年後に近い立場の人が実在するか」を面接で確かめるほうが、判断材料になります。
採用する企業なら:ロールモデル不在は、層の薄い中小・ベンチャーほど起きやすい問題です。ただし必要なのは輝かしい先輩ではなく、2〜3年先を歩いている等身大の社員です。その人に会わせる時間を選考に組み込むだけで、候補者が抱く不安の質は変わります。
知っておきたいのは、ロールモデルが見つからないのは本人の視野の狭さではなく、働き方の選択肢が増えたことの裏返しでもある、ということです。
出典:PR TIMES(パーソルキャリア株式会社/Job総研)(2026年7月6日・本文は転載せず要約しています)
② 20代の昇進意欲は59.1%で全年代最高、一方で役職者の65.7%が世代間ギャップを実感(マイナビ キャリアリサーチLab)
マイナビが全国14,000人を対象に実施した「ライフキャリア実態調査 2026年版」では、「昇進したい」と答えた20代が59.1%と全年代で最も高い結果になったと発表されました。「様々な職業を経験したい」35.9%、「将来は独立したい」23.7%も他年代を上回っています。一方で、部下との世代間ギャップを感じたことがある役職者は65.7%にのぼり、違いを感じた点として「仕事や業務の進め方」25.6%、「仕事に対する熱量」25.3%が挙がったと報じられています。
転職を考えているなら:意欲の数字は全年代で最も高いのに、上の世代からは「熱量が違う」と見られている。このねじれは、意欲が足りないのではなく、意欲の表れ方が変わったために読み取られていない、と考えるほうが実態に近そうです。だとすれば対策は「もっと頑張って見せる」ことではありません。面接でも社内でも、意欲は姿勢ではなく事実で伝わります。「成長したいです」の代わりに、直近半年で自分から担当範囲を広げた仕事を一つ挙げ、誰に何を頼み、結果がどう動いたかまで話す。長く働く姿勢を示すより、こちらのほうが伝わります。
採用する企業なら:「意欲が感じられない」と評価した候補者が、実は意欲の示し方が違うだけ、という可能性があります。「どれくらい頑張れますか」ではなく「自分から範囲を広げた仕事を教えてください」と聞き方を変えるだけで、見え方が変わることは少なくありません。
押さえておきたいのは、世代間ギャップの多くは意欲の量の差ではなく、意欲の表し方の翻訳ミスとして起きている可能性がある、ということです。
出典:マイナビ キャリアリサーチLab(2026年7月24日・本文は転載せず要約しています)
③ 転職者の46.7%が生成AIを活用、懸念の1位は「個性が消える」(マイナビ ニュースリリース)
マイナビ転職が2026年7月30日に発表した調査によると、直近1年以内に転職した正社員700名のうち、転職活動で生成AIを活用した人は46.7%。年代別では20代53.7%、30代61.7%で、年収1000万円以上の層では90.7%にのぼったとされています。一方、履歴書やエントリーシートの作成に使う際の懸念として上位に挙がったのは「個性や自分らしさが消える」20.6%、「後ろめたさや罪悪感」16.3%でした。
転職を考えているなら:「個性が消える」という不安は、順番を変えると和らぎます。おすすめは、先に自分でメモを書き切ってしまうことです。いつ・何を・なぜやって・どうなったか。この4点を箇条書きで、荒くていいので自分の言葉で書き出す。AIに渡すのはそのあとで、依頼するのは構成と表現の整理だけにする。逆に、白紙の状態から「志望動機を書いて」と頼むと、出てくるのは誰にでも当てはまる文章になります。消えるのは個性そのものではなく、材料を自分で用意する工程です。
採用する企業なら:書類が整っているのが標準になると、文章の完成度では候補者を見分けられなくなります。有効なのは、書類の一文を選んで「この場面で、あなたは誰に何を頼みましたか」と面接で一段掘ることです。自分の経験から書かれた文章なら、ここで具体が出てきます。
なるほどと思える点は、AIが肩代わりできるのは「書き方」であって、「何を書くか」は依然として自分の手元にしかない、というところです。
出典:株式会社マイナビ ニュースリリース(2026年7月30日・本文は転載せず要約しています)
3つの調査を並べると、順番が見えてきます。20代の意欲は全年代で最も高い。しかしその意欲を映す先輩は見つからず、伝えるための言葉はAIが整えてくれる。かつてキャリアは、近くにいる先輩の道筋を借りながら形にしていくものでした。その借り先が薄くなり、代わりに文章を整える道具が手元に来た、というのが今の位置です。ただ、AIが整えられるのは形であって、中身は自分がやったことからしか出てきません。参照先が外から消えた分だけ、自分の経験を後から説明できる状態で残しておくことの価値が上がっている、と言えそうです。何をやったかを毎回思い出そうとするより、その都度書き留めておくほうが早い。そもそも自分が何にモヤモヤしているのか掴めない、という段階の人には、仕事のモヤモヤを言語化する手順のほうが入口として合うかもしれません。
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