
「AIは使えますか」と聞かれて、はいと答えられる人は、この1年でずいぶん増えました。ところが今月に入って公表された2本の調査を読むと、その「はい」の中身によって、見えている景色がかなり違うことが分かります。片方は、キャリアの選択肢が広がったという実感の差。もう片方は、自分の専門性が削られていくという実感です。今日はこの2本を、「使っているかどうか」ではなく「どの段階で使っているか」という補助線で読み解きます。
Pickup:今日の注目
① 「選択肢が広がった」の回答率が、活用度で10倍以上に割れた(PR TIMES/オシジョブ調べ)
全国の20〜59歳の会社員291名への調査で、AIを高い水準で使っている層の73.9%が「キャリアの選択肢が広がった」と答えた一方、使っていない層では6.8%にとどまったと報告されています。業務でAIを使っていない人は50.9%、仕組みの構築・展開まで踏み込んだ「使いこなし層」は23.7%。職種別では、高活用層の割合がIT・エンジニア職45.2%、事務・管理職22.0%、製造・生産職7.4%と差がありました。
転職を考えているなら:職務経歴書に「生成AIを業務で活用」と書ける人は、もう珍しくありません。差がついているのは、使った結果として何の形が変わったのかのほうです。自分の作業が速くなっただけなのか、手順そのものを作り替えたのか、他の人も使える形にして渡したのか。構築・展開まで届いている人が4分の1という数字は、逆に言えば、ここは今から入っていける余白だということでもあります。
採用する企業なら:候補者の「AI活用経験あり」を額面どおり受け取ると、実像を取り違えます。聞くことは1つで足ります。誰のどの作業を、どう置き換えたのか。1件だけ具体的に語ってもらえば、短時間で見分けがつきます。職種によって触れる機会そのものに差がありますので、経験が薄い候補者を意欲の問題と読むのは早計です。
押さえておきたいのは、この10倍以上の開きが、能力の差というより「どこまで踏み込める場所にいたか」の差を含んでいる点です。
出典:PR TIMES(オシジョブ株式会社)(2026年8月4日・本文は転載せず要約しています)
② 週1日以上AIを使う人の半数超が、自分の専門性の侵食を感じている(HRプロ)
ビズリーチが、年収800万円以上かつ業務で生成AIを週1日以上使うビジネスパーソン1,007人に行った調査(2026年6月18〜22日実施)では、56.8%が自身の専門性がAIによって代替・侵食されていると感じていると報告されています。79.2%がキャリアプランを見直した、または見直す必要を感じており、44.7%は転職やキャリアについて生成AIに相談した経験があると回答。年収1,500万円以上の層で最も多かった今後の戦略は「人間性特化型」でした。
転職を考えているなら:侵食を感じているのは、週1日以上AIを使っている人たちです。使い込むほど、自分の持ち札のどれが値下がりしたのかが見えてきます。この調査の対象は年収800万円以上の層ですから、そのまま自分に重ねることはできません。それでも、経験を長く積んだ人ほど侵食を感じているという構図は、経験年数の少なさをこれまでとは違う位置に置きます。積み上げの薄さが、身軽さとして働く場面が出てくるからです。
採用する企業なら:この層は、いま自分の専門性の値段を測り直している最中です。求人票に業務内容を並べただけでは、その問いに何も答えていません。入社後にどのAI環境を使えて、どこまで裁量があるのか。そこまで書けている会社が、見比べられる場面で残ります。
知っておきたいのは、専門性の価値がいま移動の途中にある、という読み方です。
出典:HRプロ(2026年8月4日・本文は転載せず要約しています)
2本を重ねると、「AIを使っているかどうか」という線が、もうあまり情報を運んでいないことが分かります。使っていない人が半数いる一方で、使っている人の中には、選択肢が広がったと感じる人と、専門性が削られていると感じる人が同居している。同じ「使っている」の中に、逆向きの実感が並んで立っているわけです。この二つを分けているのは、使い方の段階だとWeaveXは見ています。速く終わらせるために使う段階では、削られた側の感覚だけが手元に残ります。ところが、誰かの手順を作り替え、他の人が使える形にして渡す段階まで来ると、削られた分の行き先が見えてきます。移った先に自分が立てるかどうか。違いはそこです。そして、この差は面接で語れる中身にそのまま出ます。「毎日使っています」は前者の言い方。「この作業を、こういう理由でこの形にしました」は後者の言い方です。ちなみに、44.7%がキャリアの相談をAIにしていたという数字も、同じ補助線で読めます。答えをもらう使い方か、自分の考えを外に出して整理する使い方か。この二つの違いはAIにキャリア相談で具体的に扱っていますので、実際に打ち込む前に一度のぞいておくと、返ってくるものが変わります。使える人が増えたぶん、問いは「どこまで」のほうへ移ってきたのかもしれません。
本記事の見解はWeaveXによるものであり、引用元各社の見解を代表するものではありません。調査数値は各調査の回答者の認識に基づくものであり、調査規模・対象はそれぞれ異なります。



